僕たちが好きだった川村紗也

青木秀樹×山崎彬×川村紗也 対談企画

第二回ゲスト・青木秀樹(クロムモリブデン)・山崎彬(悪い芝居)

川村自身が「私はこの人が大好き!」という方に自らオファーしてゲストに招く対談企画。
第2回のゲストは、クロムモリブデンの青木秀樹氏と、悪い芝居の山崎彬氏。
「劇団というものに強いこだわりを持っているお二人だから、いつか引き合わせたかった」という川村の願いが叶い、夢の“鼎談”が実現。
関西で劇団を旗揚げし、東京に進出。さらに同じ奈良県出身と、共通項の多い両氏と川村の3人が、互いの印象や、劇団や劇団員、演劇について、赤裸々すぎるほど赤裸々に語り合う。

――まずは山崎さんがクロムモリブデンを初めて観たときの印象を教えてください。
山崎初めてのクロムは、大阪のHEP HALLで観た「猿の惑星は地球」('06年)です。
川村それは演劇を始めてから?
山崎うん。演劇を始めるまで、舞台って観たことがなかったから。クロムを観て「ああ、僕はこういう芝居が観たいんだ。僕が劇場で欲してる舞台はこういうのなんだ」って思った記憶があります。ガチャガチャしてて、無茶苦茶で。
青木無茶苦茶(笑)。
山崎最後まで観ても意味わからんし。
一同(笑)
川村青木さんが悪い芝居を初めて観たのは、王子(小劇場)ですか?
青木そうやね。申し訳ないけど、悪い芝居は今までに3回しか観たことなくて。初めて観たのが王子でやってた「らぶドロッドロ人間」('10年)。2本目が「春よ行くな」('13年)。3本目が「スーパーふぃクション」('14年)。3つとも、全然違う作風で。
――どうでしたか?悪い芝居を初めて観たときの感想は?
青木面白かったですよ。だいぶ無茶苦茶で。
川村お互い無茶苦茶じゃないですか(笑)。
青木王子で二階建ての舞台やったのよ。上が普通の女の子の部屋なんやけど、下がジャングルで。それが面白くてね。舞台に雨降らしてさ。
川村本物の?
山崎やってましたね。
青木らぶドロッドロの。

――川村さんのクロムを初めて観たときの印象は、どんな感じでしたか?
川村私が当時お付き合いしていた人が、ザネリさん(クロムの元劇団員・重実百合)のファンだったんですよ。それで、ザネリさんがチラシに載っていた「スチュワーデスデス」('07年)に誘われて。でも、行く直前に彼氏と大ゲンカして、すごく気まずい空気の中で観たんですけど、お芝居はめちゃめちゃ引き込まれて。ほんと面白くて興奮して帰ったんです。それ以来、ずっとクロムは好きで。私たぶん唯一、ほとんどの公演を観ている劇団がクロムだと思う。
山崎それはすごいなあ。
川村初めて青木さんと話したのは、クロムが新宿シアタートップスでやった「血が出て幸せ」('08年)で、打ち上げにお邪魔したときです。
青木珍しく、俺が打ち上げに出ててな。
川村青木さんは打ち上げに出ないことで有名なんですけど、そのときはたまたま参加されてて。板倉チヒロさんが青木さんに私を紹介してくれたんです。そしたら、青木さんが私に「クロム入るか?」って。
山崎いきなり?(笑)
川村ほんとほんと!
山崎何かピンと来たんかなあ。
川村だけど、私ちょうどその頃、劇団競泳水着に入団することがすでに決まってて。まだ大学3年か4年の頃だと思うけど。
青木その打ち上げで会った直後に、柿喰う客の「真説・多い日も安心」('08年)で、川村の芝居を初めて観たんですよ。
川村私はほとんど「アフラック」っていうセリフしかなかったんだけど(笑)。
青木その日は、出会いの多い日やったんですよ。柿喰う客の中屋敷(法仁)君や小林タクシーさんと初めて話したのもその日やったし。七味まゆ味やきっちょむ(佐藤みゆき)に初めて会って名刺を渡したのもその日やし。たまたま名刺を作った次の日で、嬉しがって配ってたんやけど(笑)。でも、それがきっかけで、その後、七味もきっちょむも川村も、クロムの客演に出てもらうことになったから。
川村通称“青木チルドレン”といわれている3人です。
青木そのときの柿の公演に、うちの劇団員の花戸祐介も出てたんやけど、全然覚えてない(笑)。
――青木さんから見た、役者としての川村紗也の印象はどんな感じなんですか?

青木劇団競泳水着が好きやったんですよ。大川(翔子)さんのファンで。上野(友之)さんも、細野(今日子)さんも好きで観に行ってたら、なんかこいつも出てて。
山崎紗也ちゃんを除く、競泳水着の劇団員の4分の3が好きやったんですね。
川村いやいや、違うでしょ(笑)。
青木「あ、またこいつおるわ。こいつもメンバーやったんや」って(笑)。
川村でも私、ずっとクロムに出たかったから、青木さんに会うたびに「クロム出してください」って言ってたんですよね。
――先ほど川村さんが言ってた“青木チルドレン”の3人の中で、まず、七味まゆ味さんがクロムに出て、次に佐藤みゆきさんが出て、最後の最後に、川村さんが出ましたよね。どうして川村さんが最後だったんですか?
川村たぶん、しょうがなくだと思う(笑)。
青木そう。しょうがなく出したんです(笑)。
山崎一回出しとかんと、ずっと言われ続けるから(笑)。
川村いや、まじめに答えると、クロムの「こわくないこわくない」('14年)のオーディションを受けて、通ったんです。
青木そのときオーディション受けに来た人、ほとんど合格にしたんやけど(笑)。
――山崎さんと川村さんの出会いは何だったんですか?
山崎うちが王子小劇場で上演した「カナヅチ女、夜泳ぐ」('12年)を観にきてくれて、そのときにご挨拶をしたのが最初です。翌年の「キャッチャーインザ闇」('13年)も来てくれて。その後、カスガイの「バイト」('13年)で、初めて共演したんです。
川村考えてみれば、彬君と一緒に芝居をしたのは、そのときだけなんだよね。
山崎当時は関西に住んでて、劇団競泳水着も観たことがなかったから。紗也ちゃんのお芝居を観たのも、カスガイで共演したときが初めてだったんですよ。
――お二人から見て、川村紗也ってどんな人ですか?
青木どんな人…。
川村できれば、私のいいところを中心に話してください(笑)。
山崎「僕たちが好きだった川村紗也」ですもんね。
川村はい。
青木うーん、いいところ…。
(2人とも考え込む)
山崎しばらく何も出ないと思うので、録音止めてもらっていいですよ。
川村なんでよ!
青木なんか、強気の魅力はあるよね。「僕たちが好きだった川村紗也」っていうユニット名もそうやし。一人でプロデュースして、いろんな人に声かけて、正直もう二度とやりたくないと思うぐらい大変やと思うんですよ。でも、それをやってのけるパワーがあるんですよね。いくらボロボロになっても、やり遂げるのはすごい。
川村もうノイローゼみたいになりましたもん。「どうしよう」ってなっちゃって。
青木一見、わがままなお嬢さんっぽいんやけど、そのわがままを叶えるために、行動する力はあるなと。そこが川村の唯一のいいところ。
一同(笑)
青木だから、こいつについていったら、何かできてしまうんじゃないかなというパワーがあるんよね。絶対に負けないという。

山崎あと、ちゃんと気遣いもしてますしね。わがままだけではないから、人が集まってくるんだと思うし。「僕たちが好きだった川村紗也」というユニット名も、一見すると自己中っぽいじゃないですか。だけど、このユニット名も、ビクビクしてつけてる感じがするんですね。
一同(爆笑)
山崎世の中の自分の名前が入ってる劇団名の中で、いちばんビクビクしてる気がする(笑)。
青木ユニット名を初めて発表する前日なんて、ガクガクやったらしいよ。
川村ほんとにガクガクで。なんかめちゃめちゃ怖くなっちゃって。
山崎発表する前に、事前に連絡が来て。「このユニット名、どう思う?」って。
川村聞いた!
山崎たぶん、僕以外にもいろんな人に聞いてると思うんです。先に親しい人には伝えておくっていう。「そういう意味じゃないからね」みたいな(笑)。じゃあ、別のにしたらええやんと思うんやけど(笑)。
川村違うの。「大丈夫」って言ってほしかったの。
山崎「こういう名前で大丈夫かな?」+「そういう意味じゃないからね」+「友達やめないでね」って、事前に親しい人に言ってまわって、保険をかけてたんやなと(笑)。
川村だいぶリスキーだったから。最初、「僕たちが好きだった川村紗也」って名前が出たときは、「この名前しか考えられない!」と思ったんだけど。
山崎略称にしてマイルドにしてますよね。「ぼくかわ」って(笑)。
川村青木さんにも「ぼくかわ」っていう略称を推されて。
山崎「僕たちが好きだった川村紗也」っていうユニット名にする大胆さと、その名前をすごく不安に思う繊細さを兼ね備えてるのが、彼女のいいところだと思います。
――青木さんと山崎さんは劇団を主宰してらっしゃいますけど、“劇団”をやる魅力って何ですか?
山崎僕は、毎回作品ごとにやりたい事や興味は変わるんですけど、自分的に繋がっている感じというか。単発の読み切り漫画ではなく、連載というか。自分個人で作品を作るだけでは、そういう流れって感じられなくて。ある程度、劇団員という固定のメンバーと一緒にやることで、お客さんにもそういう繋がりを感じてもらえるんじゃないかと思っています。僕、バンドとかも好きなんですけど、曲そのものが好きというよりかは、バンドがどうなっていくかみたいなところの方が、面白いと思ってるんですよ。それは、アイドルとかでもいいと思うんですけど。
青木うんうん。
山崎なので、僕が劇団をやめないのは、演技そのものを見せたいというよりは、集団を見せたいというのがあって。今回の作品はイマイチと思ったお客さんが、また戻ってきてくれたりとか。「春よ行くな」みたいな作品が好きで、バンドを入れた「スーパーふぃクション」や「キスインヘル」('15年)みたいな作品はどうも苦手と言ってたお客さんに、「メロメロたち」('16年)は良かったと言ってもらえたりするとすごい嬉しいですし。そういうのも劇団やからやと思うんですよ。
川村そうだね。確かに。
山崎仮にメンバー全員が入れ替わっても悪い芝居は続いていっていいと思うし。それもドラマというか、劇団の魅力やと感じますし。
――青木さんもすごく劇団にこだわってるイメージがあると思うんですけど。

青木実は、作・演出をクロム以外でやるのは、今回のぼくかわが初めてで。演出だけはやったことあるんやけど。
――今までクロムしかやらなかったこだわりは何だったんですか?
青木芝居を作るためには、自然とまず劇団を作るってことになっちゃうのよ、変な話が。商品を作るより会社を作るのが楽しいというか。いい会社を作ればいい商品も生まれる、みたいな。バンドやりたいってのと同じで、曲ごとにいいギタリストやいいドラマーを連れて来たら素晴らしい曲が作れるかもしれないけど、それよりも決まったメンバーでバンドとしてやることで、点が線として繋がっていくし、そこに魅力を感じるんですよ。
川村なんかね、そういうところが個人的に似てるなって思うんですよ。2人が。
山崎僕は、外部でプロデュース公演も何回かさせてもらってるんですけど、そのときも絶対、劇団としてやってるぐらいのつもりでやらしてくださいとは、最初に言いますね。まずその座組を、何週間か使って、劇団としての座組にすることから始めます。
川村それは結構、今回のぼくかわにも求めていることだな。
山崎芝居が面白くてお客さんに評価されても、チームとしてギスギスしてたらなんにも気持ち良くないから。
川村そうそう!ほんとにそう!
山崎チームとして良くて作品がうまくいかなくても、それはそれでモヤモヤするんですけど、でも、チームとして良いと、いい作品を最後まで目指せるというか。
川村うんうん。
山崎「まだ違うな」と思いながらも、「じゃあ、こうしよ。じゃあ、こうしよ」って。千秋楽まで追い続けられる感じはあるんですよね。
川村すっごくわかる。
山崎キャスティングするときとかも、めちゃめちゃ考えるよね。
川村青木さんの作品に合う合わないとかももちろん考えるし、全体のバランスとかも考えるけど、座組に貢献してくれそうな人柄というか。根っこから演劇を愛している人を、今回のぼくかわでは集めたつもりです。あと、青木さんがこういう独特な方なので(笑)、青木さんのことを面白がってくれそうな人。
山崎でも、これがないと、青木さんと芝居やれてない方、いるよね。キャラメルボックスの多田(直人)さんとか、超楽しみ。

(取材・文 おとむ / 撮影 辻 朝子)

さらに3人の話はディープな話題へと進んでいくが、その模様は後編で! そして青木秀樹の作・演出による僕たちが好きだった川村紗也②『ゆっくり回る菊池』は、11/22(火)〜11/27(日)こまばアゴラ劇場にて。詳細はこちら

山崎 彬(やまざき・あきら)

1982年12月10日、奈良県生まれ。劇作家・演出家・俳優。劇団「悪い芝居」代表。
2004年12月、京都を創作の拠点に「悪い芝居」を旗揚げ。『嘘ツキ、号泣』(2009年)で第17回OMS戯曲賞佳作を受賞、『駄々の塊です』(2011年)で第56回岸田國士戯曲賞最終選考ノミネート、佐藤佐吉賞最優秀作品賞を受賞。「悪い芝居」の近作に『キスインヘル』(2015年)、『メロメロたち』(2016年)など。
俳優としては東京に拠点を持ち、『ショーシャンクの空に』(作:喜安浩平、演出:河原雅彦)、『トーキョー・スラム・エンジェルス』(作・演出:谷賢一)、『書く女』(作・演出:永井愛)、『トンマッコルへようこそ』(作:チャン・ジン、演出:東憲司)に出演するなど活動の幅を広げている。

<舞台>
悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
9月22日(木・祝)~26日(月) 京都芸術センター 講堂
10月4日(火)~10日(月・祝) テアトロBONBON
作・演出:山崎彬  音楽:岡田太郎  美術:杉原邦生(KUNIO)
http://waruishibai.jp/864197re/

キャラメルボックス2016クリスマスツアー『ゴールデンスランバー』
11月30日(水)~12月4日(日) 新神戸オリエンタル劇場
12月10日(土)~25日(日) サンシャイン劇場
原作:伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮文庫刊)
脚本・演出:成井豊
http://www.caramelbox.com/stage/goldenslumber2016/

<TV>
大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)
第41回10月16日(日)20時~

<連載>
ファッション誌「NorieM」(季刊)にて、エッセイ「人生はドッキリだ(仮)」連載中

青木秀樹(あおきひでき)

1963年7月21日、奈良県生まれ。B型。
大阪芸術大学映像学科卒業。
1989年クロムモリブデン旗揚げ。
以来、同劇団の主宰・作家・演出家を務める。
好きな食べ物は焼きそば。


<舞台>
クロムモリブデン「(タイトル未定)」
作・演出 青木秀樹
2017年4月東京、5月大阪

川村紗也(かわむらさや

1986年10月25日生まれ。東京都出身。2007年より「劇団競泳水着」に入団。13年の退団後は「カスガイ」に参加。14年には「僕たちが好きだった川村紗也」を立ち上げる。2016年の出演作品に【舞台】MCR『逆光、影見えず』、『イヌの日』、小松台東『明るい家族、楽しいプロレス』がある。

<舞台>
小松台東「山笑う」
作・演出 松本哲也
2017年5月三鷹市芸術文化センター 星のホール

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