僕たちが好きだった川村紗也

中山祐一朗×川村紗也 対談企画

第一回ゲスト・中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)

川村自身が「私はこの人が大好き!」という方に自らオファーしてゲストに招く対談企画。記念すべき第1回のゲストは、阿佐ヶ谷スパイダースの中山祐一朗氏。3年前の共演をきっかけに知り合い、先輩後輩の関係でありながら意気投合したという2人が、久々に再会。お互いの共演時の思い出や、役者が公演をプロデュースすることについてなど、ざっくばらんに語り合う。

中山さんに「女優やめて…」って言われました。(川村)

中山こうやってカワウソ(川村紗也のあだ名)と絡むのって何年ぶりくらい?
川村誰かから中山さんにお子さんが生まれたっていうのを聞いて、「うそーっ!」って思ってすぐに連絡したのが、たぶん最後だと思います。
中山そのときはメールをもらったんだっけ?
川村そうです。私が「中山さん、パパになったんですか?」って送ったら、「カワウソも早く女優辞めて、子供産んだ方がいい」って返信が来て。
中山「早く女優辞めろ」って?俺、そんなメール返した?
川村はい。
中山マジで?(過去の送信メールを調べながら)
川村マジです。
中山そういうことはね、素直に言えないと思うんだけどなぁ‥カワウソだからかなぁ?あ、見つけた。「カワウソも絶対、子供産んだ方がいいよ、芝居辞めてでもおススメ」。…全然ニュアンス違うじゃん!
川村ほんとだ(笑)。
中山「女優辞めた方がいい」なんて言ってないよ!「辞めてでも」だよ。
川村辞めてでも…。そういうことか。
中山あと、カワウソの返信メールに「私諦めてるんだよ大分。彼氏募集中」って書いてある(笑)。
川村私、そんなこと書いてるんですか?恥ずかしい!

「こうしたい!」って言うのがすごく苦手で。でも、「これは嫌だ!」っていうのは明確なんです。(川村)

中山こういう個人プロデュース企画やる人って、やっぱみんなちゃんとしてるじゃない。これから大変なのかな?
川村一人でやるって大変だなと思ったけど、楽な面と、大変な面とどっちもあるなとは思いました。
中山へー、楽な面もあるんだ。
川村自分で好きなように決められるから。
中山あー、なるほどね。
川村ただ性格的に、すごくウジウジしちゃうので。
中山じゃあ、大変じゃん。いろいろ決めるの。
川村そうなんですよ。だから毎日「あーーっ、あ゛ーーーって」って悶えながら。私、「こうしたい!」って言うのがすごく苦手で。でも、「これは嫌だ!」っていうのは明確。
中山なるほど。それはそれで厄介だね。
川村結局、自分は役者なんだなってあらためて気づいたというか。
中山演出家とかやるとさ、こうした方がいいっていうのはわからないけど、この演技はやめてほしいな、って思い浮かぶことはあると思うのよ。でも、それだけわかっても演出ってできないじゃん。その演技をやめさせるために、気持ちのことを説明して違う方向に持って行ったりして。そういうこと考えると、演出家って大変な仕事だなぁって思うけどね。
川村そうですね。今回のプロデュース企画を始めて早々に、私は演出家にも作家にもなれないと確信しました。
中山でも、そういう自分の特性がわかるっていうのが、まず第一歩で。そこから成長していくっていうのもあるよね。
川村中山さんって、阿佐スパのときに1回演出やってるんでしたっけ?
中山やってる、やってる。
川村他は?
中山やってない。あ、若い時はやってたけど。大学時代とか。演出もしたし、ホンも書いたよ。
川村脚本を書いたのはその1回だけですか?
中山1回きりだね。
川村え、そのときはどんなのを書いたんですか?
中山内容はすごくくだらなくて。「カーリング先生」っていう題名で察してくださいっていう(笑)。
川村(爆笑)

今回の公演が失敗したら、川村紗也の今後の出世に響くよ。(中山)

中山前に京都でやったヨーロッパ企画のイベントで、コメディ劇場っていう仮設の劇場を作ったことがあったのね。そこでいろんな人たちが笑いをメインにしたお芝居をやるんだけど、うちらだけお客さんが笑うかどうかわらない、難しい芝居をなぜかやってて。
川村ナンセンスコメディみたいな?
中山ナンセンスコメディにも見えるんだけど、読み解いていくとすごく難しい戯曲でもあったっていう感じで。そのナンセンスの部分がスベり始めると、かなり危険なことになるっていう。
川村それって、上田さん(ヨーロッパ企画の主宰・上田誠)の演出ですか?
中山上ちゃんが演出してくれて。難解な戯曲にチャレンジするって意味ですごく楽しかった。仮にこれをコメディだと思って観ている人の前でやってスベることになったとしても、俺たちはそんなには失敗を恐れてないの。これまでの演劇人生で結構いろんなところで傷ついてきてるから、上ちゃんも俺もスベったりしてもあせらないというか。これぐらいの傷、別にいいやっていう(笑)。
川村うらやましい。私まさに今、その強い心が欲しいです。
中山いや、でもね。「僕たちが好きだった川村紗也」では、そういう風に思っちゃいけないよ。
川村ダメですか?
中山パルコ劇場やシアターコクーンみたいな大きな劇場でお芝居をやらせてもらえているからこそ、小さなキャパの劇場で実験的なことってできるの。例えそこで失敗して傷ついたとしても、それはそれで何かの糧になればいいや、ぐらいの感じで。そのことが出世に響くとか、そういうものではまったくないっていうのをわかってやっているから。
川村そうですよね。
中山でも、「僕たちが好きだった川村紗也」は失敗すると、カワウソの出世に響くよ!劇場のキャパがどうであれ。
川村え?!響きますかね?
中山もちろんだよ。だから、傷つくのを恐れて頑張ったほうがいいと思うよ。

とにかく観られないと始まんないから。心に引っかからないのが一番嫌だった。(川村)

川村「僕たちが好きだった川村紗也」っていうユニット名もそうなんですけど、とにかく琴線に触れないのが一番嫌だなって思って。自分でやるときに。
中山うん。
川村私が作・演出までやるならまだしも、一役者がプロデュースして、しかも私レベルの役者がやるってなっても、本当に弱いから、パンチとして。ユニット名とか劇団名って何でもいいっちゃ何でもいいんだけど、いざ考えだすとどれも「これだ!」って思えなくて。その中でこの名前を付けてもらったときに、すごく自分の中で腑に落ちたんです。
中山そういう考え方だと、正しいネーミングだよね。確かにパンチはある。
川村とにかくたくさんあるでしょ、演劇って。そんな中で、まず観てもらわないと始まんないから、心に引っかからないのが一番嫌だった。それをまず回避することを一番初めに考えて。やっぱり、いい悪いは別にして、一回聞いて覚えてもらえる団体名が一番いいと思ったんです。
中山そうだね。
川村ただ、私を知ってくれている人は、わりとこのユニット名を面白がってくれるけど、知らない人だったり、元々「なんだあいつ」って思ってる人には、余計に引かせる名前だろうなあとは思っていて。だから正直言うと、このユニット名にするの、超怖かったです。今でもその怖さはあります。
中山このプロデュース企画って、やっぱカワウソ自身が主役でたくさん出るものを書いてもらうのが目的?
川村いや全くそういうつもりで考えた企画ではないんです。単純に役者って、オファーを待つ仕事じゃないですか。なんかその状態に「もういいや!」って思って。「私がやりたい人とやるからいいや!」って。
中山すごいね。
川村作品を作るのが作・演出の人からスタートするんじゃなくて、もっと役者発信でもいいんじゃないかって。圧倒的にそういう形って少ないから。

「山笑う」って、のどかで明るい春の山っていう意味なんですけど、字面がなんか怖くていいなって。(川村)

中山プロデューサーとしては、やってみてどう?
川村自分の中で、ここはこう、ここはこうってはっきり決めていかないと、本当に全部がブレブレになっちゃうなとは思いました。だからってわけでもないけど、まずはチラシにお金をかけました(笑)。
中山チラシにはこだわりがあったの?
川村はい。宣伝美術だけははずせないって。前にいた劇団のときのチラシのデザイナーさんにお願いしたんですけど。その方と話しているときがすごく面白かった。
中山そういう機会が持てたのはすごくいいね。役者はあんまないからね。
川村「僕たちが好きだった川村紗也」が長いから、公演タイトルはシュッとした「渇き。」みたいなやつにしようと思ったんです。それで、なんか面白い言葉ないかなって調べていたら、「山笑う」っていう単語を見つけて。これ、俳句の季語なんです。草木が萌え始めたのどかで明るい春の山の様子を表すらしいんですけど、私、この言葉を見たとき、すごく怖いなって感じたんです。「山」に「笑」とか、怖くないですか?その字面の感じが、すごくいいなって。
中山じゃあ、「山笑う」っていう公演タイトルも、カワウソが決めたの?
川村そうなんです。
中山へえー、脚本家じゃないんだ。
川村チラシのデザイナーさんが最初に出してくださったデザインは、「山」をポップなフォントでどーんと強調したのが来て。でもこれだと、山さんって人が笑うみたいになっちゃうから。“山笑う”で一つに見せたいんですってお願いして。
中山うん。
川村そういうやりとりが、プロデュースをしてて面白いなって思うところです。
中山公演チラシに使われているメインの写真、正面に添えてないんだね。写真をチラシの真ん中に置くんじゃなく、右端と左端の幅を少しずらして。
川村あれ?私それ、今初めて気づいた。
中山いやいや、そういうのがデザイナーのこだわりなんだよ?こういうお洒落なセンスが、細かいところにぽつぽつ入ってきてるはずだよ。
川村まぁまぁ、だから何が言いたいかというと、ちゃんと考えているんですカワウソも。ふへへ。
中山え、それはこれに気付いてなかったことの言い訳?(笑)
川村(笑)

カワウソは真面目に見られようとして、人との間に壁を作るんだけど、その壁がもろもろなんだよ(笑)。(中山)

中山阿佐ヶ谷スパイダースで共演したの、なんていう芝居だったっけ?
川村「荒野に立つ」です。
中山あれ、女の子ばっか出てて大変じゃなかった?
川村んん…どうだろう。でも、すごく楽しかった!ただ、あの公演で私は女優に向いてないって思ったんです。この華やかな世界で私は生きていけないって。
中山え、そうなの?共演者みんなに面白がられてたじゃん。
川村いやでも、私は一人ウジウジしてて。なんでこんなにできないんだろうとか、なんでこんなに呑みの席でうまく振る舞えないんだろうとか(笑)。
中山でも、俺とはよくしゃべってたよね。
川村そうそう、中山さんとはよくしゃべってた。長塚圭史さんに怒られたもん、二人でふざけてたら。
中山あー、それ良くやるんだ、俺。一緒にふざけてて、若い客演さんが圭史に怒られるパターン(笑)。
川村阿佐スパで、私どんな感じでした?
中山うちの劇団って、劇団員が3人しかいないからさ、現場にたくさん外から客演さんが来るわけじゃん、そうすると、最初から自然体の人もいるし、しっかり壁を作って接してくる人もいるのね。その中でカワウソはさ、一応は人との間に壁を作るんだよ。「自分は真面目に見られたい」みたいなのがあって。
川村ちょっとー。
中山だけど、その壁がもろもろなんだよ(笑)。もろくてすぐに崩れちゃうの。
川村(爆笑)
中山そこが面白いんだよね。
川村中山さん…私のこと大分わかってます。
中山でもね、しっかりと壁を作る人とは、あんまり面白くしゃべれないの。その固い壁を崩すほどの話術が俺にないから。一方で、最初から自然体の人はしゃべりやすいんだけど、話しているうちにだんだん「こいつ、失礼なやつかも」って思ったりするのよ。
川村うんうん。
中山カワウソの場合は壁はあるんだけど、俺がふざけてちょっかいかけたら、ぽろぽろぽろって崩れていくから、話していて楽しいっていうか。当時はそんな印象かな。今もそういうところは変わってないといいなって思うよ。
川村たぶん変わってないと思います。ただちょっと今、いい意味と悪い意味のショックが…。この1年くらいですごくいろんなことを知って、自分は成長したんじゃないかって思っていたけど、結局変わってないんだって思っちゃった。
中山いやいや、今のは3年前の印象を言っただけだから。
川村でもたぶんね、変わってない。
中山いいじゃない。成長なんていつでもできるし。
川村したい!成長。
中山でも、そんなカワウソだから、今日の対談に俺、来れたんだよ。ふつう恥ずかしくて来れないよ、カワウソの芝居とか全然観てないのに、のこのことさ(笑)。
川村いえいえ、嬉しいです!
中山12月に俺の出る舞台とカワウソのこのプロデュース企画、公演期間がかぶってるから、お互いにまた観に行けない感じかな?
川村私は行けます、「ア・ラ・カルト」(中山氏が12月に出演する舞台「ア・ラ・カルト アンコール~役者と音楽家のいるレストラン」)。中山さんが私のを観に来るのは、たぶん無理。
中山そっか。
川村もし今後、「僕たちが好きだった川村紗也」が中山さんにオファーしたい、ってなったらどうですか?
中山それは、マネージャーに言うだけだよ(笑)。
川村もっとどうなってたら出るとかはありますか?
中山そういうのは別にないけど。
川村あー、やっぱり「僕たちが好きだった川村紗也」、1回観てほしかったです!第1回公演を観ていただいてたら、第2回公演のオファーの話がしやすいのになあ。
中山あ、2回目でもう俺を呼ぶつもりでいるんだ!(苦笑)

(取材・文 緑川 陽介 / 撮影 辻 朝子)

中山祐一朗(なかやまゆういちろう)

岐阜県出身。1998年より阿佐ヶ谷スパイダースに参加。以降、長塚圭史作品はじめ外部舞台、映像で活躍。2010年より吉澤耕一演出『ア・ラ・カルト2~役者と音楽家のいるレストラン~』レギュラー出演。近年の舞台に、松本祐子演出『阿修羅のごとく』、長塚圭史演出『あかいくらやみ~天狗党幻譚』、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出『かもめ』、蜷川幸雄演出『火のようにさみしい姉がいて』など。舞台以外ではTBS・MBS『深夜食堂3』、映画『深夜食堂』、アニメ『Go!Go!家電男子』シリーズのポットン役など。

<舞台>
青山円形劇場プロデュース
『ア・ラ・カルト アンコール ~役者と音楽家のいるレストラン』
2014年12月18日(木)~26日(金)
会場:こどもの城
料金:¥6,800/プレビュー公演¥5,000(全席指定・消費税を含む)
出演:
【役者】 高泉淳子 山本光洋 本多愛也 中山祐一朗
【音楽家】中西俊博(violin)
北島直樹(piano) 12/18-22 / 林正樹(piano) 12/23-26 大阪
【ゲスト】 陰山泰 ROLLY
【演出】 吉澤耕一
【台本】 高泉淳子
【音楽監督】 中西俊博
お問い合せ:青山円形劇場(こどもの城劇場事業本部)
http://www.aoyama.org/
TEL:03-3797-5678
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-1

CREATIO ATELIER THEATRECAL act.01
『蛙昇天』
作:木下順二
演出:長塚圭史
【仙台公演】
2015年2月16日(月)~3月1日(日)
会場:せんだい演劇工房10-BOX box-1
【新潟公演】
第4回 芸術のミナト☆新潟演劇祭 参加作品
2015年3月14日(土)〜15日(日)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
お問い合せ:boxes Inc.
http://creatioatelier.works
TEL : 022-353-9755

<映画>
『深夜食堂』2015年1月31日(土)全国ロードショー
http://meshiya-movie.com/

<TV>
『深夜食堂3』TBS、MBS、RKB、他OA中
http://www.meshiya.tv/

<web>
「Go!Go!家電男子」シーズン2 ひかりTVにて配信中
http://kadendanshi.com

川村紗也(かわむらさや

1986年生まれ、東京都出身。2007年より劇団競泳水着に参加。2009年より劇団員として活動を開始し、2013年5月に退団。以降フリーで活動する。劇団公演以外の近年の主な出演作品に阿佐ヶ谷スパイダース『荒野に立つ』、劇団、本谷有希子『ぬるい毒』、ブルドッキングヘッドロック『スケベな話 バットとボール編』、クロムモリブデン『こわくないこわくない』等。 演劇ユニット「カスガイ」の構成員でもある。

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